酒と女と周五郎

http://www.aoky.net/articles/daniel_pink/dan_pink_on_motivation.htm

上記のドキュメントがめちゃくちゃに面白い。

まぁ、まずは見てほしいのだが、大ヒット作を出し、莫大な報酬を得た作家の多くが、断筆状態になる理由がわかる気がします。報酬は、太閤記の石垣補修のような、単純なルールと明確な答えのある作業に対しては効果があるが、こと創作のようなクリエイティビティが問われる分野において は、障害になるのです。

海の向こう、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) に行ってみましょう。11人のノーベル経済学賞受賞者を輩出しています。偉大な経済の頭脳がここで学んでいます。ジョージ・ソロス、フリードリヒ・ハイエ ク、ミック・ジャガー。(笑) 先月、ほんの先月のこと、LSEの経済学者が企業内における成果主義に関する 51の事例を調べました。彼らの結論は、「金銭的なインセンティブは… 全体的なパフォーマンスに対しマイナスの影響を持ちうる」ということでした。


H●NTERH●NTERや、涼●ハ●ヒや、B●STARDがいつまでたっても完結しないわけですね。IF THEN式の報酬というのは、創作活動に必要な脳内麻薬の分泌を妨げてしまうのかもしれません。一方、貧乏なまま傑作を書き続けたゴッホやモーツァルトは、まさにその貧乏のおかげで、創作活動に没頭することが出来た。

しかし、お金は欲しい。おおいに欲しい。

血の涙を流して外から眺めるしかなかったシンガポールのラッフルズホテルのバーでキャビアをつまみにマティーニを頼んだりしたいし、竜宮城かとおもったタイのペニンシュラホテルのプールをバタフライで泳いだりしたい。金銭的に恵まれることと、創作意欲がトレードオフにあるのなら、はゆまのような作家はどうしたらよいのでしょうか?

その解決のヒントになる方がいます。

山本周五郎さん。

いわずとしれた、時代小説の大家です。

「赤ひげ」「もみの木は残った」「さぶ」など数々の大ヒット作を著した方ですから、もちろん周五郎さんの手元には莫大な印税が次々に舞い込んできます。が、周五郎さんの家は貧乏なままだったそうです。なぜなら、一銭たりとも、家族にお金を渡さなかったから。

昭和の女の忍耐強さで必死に耐えていた周五郎先生の奥様にもある日限界が来て、泣く泣く周五郎さんにお金を入れるよう訴えました。

すると周五郎先生はべらんめぇ調で言ったものでした。

「馬鹿野郎。印税は俺の金じゃない。次の作品はもっと面白いものを書けよということで読者様が渡してくれた先行投資だ。つまり公の金だ。一銭たりとも私事に使っていい金じゃねぇんだよ。この金は皆、読者の方々のために芸の肥やしに使う」

すばらしい言葉ですね。印税を報酬ではなく投資だと、コペルニクス的解釈をしたわけです。MBAで取り上げてもいい事例ではないでしょうか。

ちなみに、昭和の男の作家にとって芸の肥やしといえばなんでしょうか?

酒と女です。

というわけで、周五郎先生は、お金を妻にも子供にも渡さぬまま、色町にくりだしては、親の敵のように使いまくったのでした。

江戸は貧乏長屋の、つつましやかで人情ぶかい庶民の生活を美しい言葉で描いた周五郎先生は、その一方で自分の家族を貧乏のどん底に突き落としていた人だったんですね。貧乏を放置したままの権力(国)の冷淡さに対してもっとも強く憤る小説家だった(引用:マガジン9条)周五郎先生も、家族の貧乏はどうでもよかったみたいです。

まさに、ピー作家のかがみです。

はゆまも見習わずにはいられません。どれくらい売れるかは分かりませんが、印税が入ったら、これは先行投資やと、「花の慶二」のクライマックス並の勢いで使いまくったろうと思います。キタかミナミで巨大な馬に乗って朱槍をかつぎ、「銭まくど、銭まくど」と叫んでいる人がいたら、それははゆまです。だから、読者の皆様も、安心してお金を預けてくださいね。

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三国志連載小説
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プロフィール

黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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