また拾ってきた

注射を嫌って大脱走したニャオスケだが、ひょっとしたら故郷に戻っているのかもしれないと思い、火曜日にキャリーを持って公園に行く。

拾った場所で、キャリーを開きまわりに餌をばらまいたところ、早速藪からガサゴソと音が。

「お、お前は!?」

元々拾う候補第一番目だったサビ猫だった。とにかく、模様がいかにも雑種。ぶちゃいくだが、無愛想な顔のまま平然と膝にのるという複雑な性格が好みにどストライクだった。それに、よく顔を見ると、目元はぱっちりしててちゃんと可愛いのである。

またたびをまく必要もなく、自分からキャリーに入り、試しに蓋をしめても香箱座りで大人しくしている。

どうしたものか、可愛い、連れて帰りたい、でもニャオスケを探しに来たんだしなぁと迷っていると、

「猫好きなの?」

と、マスクをつけたおばちゃんから声をかけられた。

「はい、脱走した猫を探しに来たんですけど、おびき出された別の猫がキャリーに入っちゃったんです」

そう事情を説明したところ、おばちゃん手を叩いて、

「あなた、先週の月曜日にソマリちゃんもらってくれた、赤いブルゾン着た人でしょ。広島焼き屋のあるアパートの上に住んでいる」

知らないうちに有名人になっていた。

餌やりグループのネットワークは、本当に凄い。

「そうなんです。でも、病院に連れて行く途中で逃げられちゃって」

「まぁ、でもひょっこりアパートの方に戻ってくるかもしれないし、公園に戻るかもしれないわよ。その子も折角、キャリーに入ったんだし、持って帰っちゃいなさいよ。もし公園にソマリちゃん戻ってきたら、貴方に連絡するようにするから。二匹くらい飼えるでしょ」

で、持って帰ることにした。

ニャオスケが天真爛漫で終始ニャンニャン鳴いていたのに対し、今回は、とにかく質実剛健。まったく鳴かない。たまに鳴いても「ギャン」と野太い声で吠えるだけである。猫じゃらしを見てもつまらなそうな顔で黙殺する。

プライドも高い。ニャオスケの匂いが残っているものは絶対使わない。トイレにうなっていたし、餌をずっと食べないなぁと思っていたら、餌皿が駄目で、違う皿に変えてやったら、ぱくぱく食べ出した。

でも、やっぱり甘えたである。はゆまの行くところにはずっと付いてくるし、風呂もしっかり監視されている。今日は風呂桶の縁にのぼろうとして失敗して滑り、あごを強打していた。思わず爆笑したところ、むっとした顔をし、背中を向けられた。でも、その姿勢のまま、風呂からあがるのを待っている。背中に哀愁がただよっていた。どこかハードボイルドな雰囲気の猫なのである。

とにかく私を見て、私と遊んでという性格だったニャオスケとは、ことごとく正反対で、同居させたら意外と相性がよさそうな気がする。餌やりネットワークの哨戒線にニャオスケが引っかかるのを気長に待ちつつ、この新入り猫と暮らしていこうと思う。ハードボイルドだからウラジミール・ブーチンと命名。もう、絶対に外には出さない。
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プロフィール

黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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