風雲児たち 幕末編21巻

風雲児たち 幕末編21巻を購入。

風雲児たちは幕末を舞台に坂本竜馬など、志士の活躍を描いた漫画です。作家はギャグ漫画家のみなもと太郎。

幕末がテーマなのに、なぜ幕末編って書かれているのかというと、もともとはペリー来航から五稜郭陥落までを、十巻程度で描くはずだったのが、薩長の因縁や鎖国といった幕末の状況を伝えようと思ったら、江戸開府から書かないと分からないという作者の判断で、なんと関が原から物語はスタート。その後も、あまり描かれることのない、江戸時代中期から後期にかけてを、保科正之の清廉な政治、田沼意次の奮闘、蘭学者たちの栄光と蹉跌、大黒屋光太夫・最上徳内などの対外接触を軸に、一切手を抜くことなく記述。

それで、一巻扉絵に描かれた竜馬が出てくるまでに、連載開始の1979年から20年以上がかかってしまいました。おまけに掲載雑誌のコミックトムも2001年に廃刊。一時は、このまま未完で終わるのかとファンをやきもきさせましたが、コミック乱に拾われ、幕末編として再スタートと、内容と同じく、作品そのものも大河ドラマ的な人生を辿っています。

もともと、凄惨な描写の多い作品なのですが、ギャグ漫画家らしく処々に取り混ぜられた時事ネタやパロディ(20巻ではなんとまどかマギカネタが出ていた)が、これまで清涼剤になっていました。ただ、この幕末編21巻は、一巻丸々桜田門外の変についやされ、生々しい、紙面から血の匂いが漂ってくるような仕上がりになっています。

雪に散らばる無数の指、首を落とされる直前井伊大老の目に映る血膨れした暗殺者の顔のアップ、浪士たちに切り刻まれ飛び出る小河原秀之丞の目、瀕死の重傷を負ってももなかなか死に切れない水戸浪士側、井伊側双方負傷者の苦悶など、目を覆いたくなるような場面が続きます。

この事件はいわば井伊大老に対するリコール運動だったわけですが、まことに苛烈。これと比べたら、先日の選挙など、児戯に等しいといってもいいくらいです。昔は指導者をかえるには、こういったむき出しの力の行使しかなかったのですね。

中国の正史に残る歴代帝王は611人いるそうですが、そのなかで天寿を全うできたのは、たった339人、残りは全部戦死したり、暗殺されちゃったりしています。昔はやった100人の村でたとえると、もし中国の皇帝100人で出来ている村があったとしたら、そのうちの44人は悲惨な死に方をするということです。(ちなみに平均寿命は39歳で、25人は何らかの精神疾患をわずらっています。絶対住みたくありませんね)

さらに、先史時代まで遡ると、王は老いて力が弱まると、切り刻まれて焼かれ、神への生贄にされる運命にありました。ていうか、それが集団の団結と プライドを保つためにリーダーが果たさなくなくてはならない最も重要な仕事だったのです。

今回の選挙では、議員宿舎から追い出されたよ~とか、職を失っちゃったよ~とか、泣き言抜かしてる連中がいるようですが、指導層にありながら、知恵も勇気も根性も示せなかったくせに、何を言ってやがると思います。昔だったら、間違いなく民族の守護神を示すトーテムポールに縛り付けられて、蒸し焼きにされていたところです。命があるだけもうけもの。政権につけた責任を国民も負う民主主義で本当によかったですね。

知恵も勇気も根性も、当時の大名としては水準以上だった井伊直弼が亡くなったのは四十七歳。過酷な安政の大獄で有名ですが、民に対しては温かくいたわり深い君主だったようで、その大獄で命を失う吉田松陰が名君と褒め称えています。松陰が兄への手紙のなかで紹介した直弼の歌。「掩ふべき袖の窄きをいかにせん行道しげる民の草ばに」新君主として初めて任地に赴いた際、まだ何の実績もあげていないのに、領民が総出で温かく出迎えてくれたことを恥じて詠んだものだそうです。

追記:幕末編がはじまってからはや10年。21巻も出てるのに、まだ桜田門外の変。DQⅢでいったら、カンダタ辺りか。で、みなもと太郎先生は六十五歳……終わるのか、本当に……

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黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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