今さらエヴァと自分について

ちょっと「花武担」の筆休め。

今年(2014年)11月20日にエヴァ最終巻が発売らしい。

1995年10月から連載開始だから実に19年、シンジやレイやアスカよりも、作品の方が年上になってしまった。

作中のかつては先鋭的に見えたデジタルガジェットも、幾つかは2015年を待たずにすでに時代遅れになってしまっている。

しかし、それでも、エヴァ(あえて新劇の方でなくこちらの表記で書く)は、今でも私のなかでは新しい作品のままだし、少年の頃私の心に食い入った爪は年をおうごとにつれ、その力を増していっているもののように思える。何事か痛みを伴わずには振り返られない作品なのだ。

それはこのエヴァが、まさに私達の世代、いわゆる団塊ジュニアといわれる世代のために作られたものだったからのように思う。

日本史上、最も幸福な子供達。もともと、はゆま達、いわゆる団塊ジュニアは、そう呼ばれるにふさわしい世代のはずだった。戦後40年続いた平和で、たまりにたまった国富はひっくり返したおもちゃ箱の中身のように、私達の前にぶちまけられ、お金を持った子供の群れという神代以来初めてあらわれた生き物のために、面白い大人達が面白いことを次々と仕掛けてくれた。

少年ジャンプ、ファミコン、ドラクエ、ビックリマン、ミニ四駆。少なくとも、80年代から90年はじめにかけては、大人と同じく子供も夢か祭りのような日々をすごしていた。パトレイバーの後藤隊長が言ったように「高度成長って日本人の性なのかな」と思われ、大人気だったドラゴンボールの悟空は もっと強いやつをさがして地球を飛び出していった。

が、誰もが知っている通り、90年3月の総量規制に よって膨れに膨れ上がったバブルは弾け、祭りには必ず終わりが来ることを、日本人も知った。とはいっても、すぐに景気悪化の深刻さが感じられたわけではなく、はゆまのような中産階級の家にまでその影響が及んでくるのは96年~98年にかけてのことだった。

はゆまはまだ高校生で、幸福な消費者からそろそろ脱却しなくてはならないことを予感しつつも、まだ祭りの余韻に浸っていて、世間に漂う閉塞感への憂いも、当時はまだ傷のかさぶたをいじって湿った楽しみに耽るような余裕があった。
そんなときに、のっぴきならない衝撃度を持ってあらわれたのがエヴァンゲリオンだった。

短いカットを連続で繋げるスタイリッシュなOP、魅惑的なキャラクタ、細部にまでこだわった近未来の世界観、散りばめられた衒学的な謎の数々、緊迫感のあるストーリー展開。

民放が2局しかない片田舎で放映がはじまったのは一年遅れのことで、 しかも春休み子供スペシャルという悪い冗談としか思えない番組枠でのことだったが、とにかく夢中になった。そして、その分だけあの伏線を放り出しような最終回は残念だった。

映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(以下、EOE)」は不完全燃焼で終わったそのテレビ版最終回を補完し、この世紀末にふさわしい神話を締めくくるものになるはずだった。が、そうはならなかった。映画はテレビ以上に混乱と破綻に満ち、メタな意味で悲劇的なものになった。

1960年生まれの庵野監督は大人が子供に対し物語を作った最後の世代であり、大人になれないまま成長した子供が、同じく大人になれないまま成長した子供に物語を提供しだした世代の走りだったように思う。彼の作った作品に自己否定と懐疑の陰影が深いのは歴史の必然だろう。

「それは夢の終わりよ」という言葉で突き放され、最も魅力的だったメインヒロインが惑星規模に膨れ上がったあと血液と脳漿をぶちまけて崩れ落ちたとき、確かに私のなかで何かが終わった。

幸せな消費者、子供だった時は過ぎ、期待していたカタストロフィが得られなかったかわりに、いつか自分自身が物語の 語り手になろうと決意した。それが実現するまでには10年以上の月日がかかったが、その時日本は映画冒頭でシンジが佇んだ廃墟と同じ光景のなかにいた。そして史上最も幸福だったはずの子供達は未来の約束を皆破られた上、端から守る気のない約束をこれからも押しつけられ続ける史上最も可哀想な世代になっていた。

歴史小説家なんてものの端くれにしがみついている自分だが、物語を書くということの原点の一つにエヴァがあり、今でも振り返って、こうして何事かを書くとき、筆が震えるのを、どうにも抑えられない作品のように思う。

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三国志連載小説
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プロフィール

黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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