猫となかよくなる方法

三連休、最終日。
布団干して、部屋を開け放って、ピンと清潔な冬の風を入れて、掃除したあと、ジャージに着替えてジョギングに出発。

公園を半周したところで、辺りを見回すと、最近ご無沙汰だった仲良し猫ピーが、いつものケヤキの木の下に箱座りしていた。

「ピー」

と声をかけると、ニャッと短く鳴いたあと、こちらに歩み寄ってくる。尻尾がピンと立って、御機嫌なようだ。

膝に乗せ、日当たりのいい歩道の縁石に腰かける。そのまま、一人と一匹でひなたぼっこしていると、

「えっ、それここにいる猫?」

とおじいちゃんから声をかけられた。

「そうですよ~」

と答えると、

「散歩しているといつも見掛ける猫だからね。はぁ、しかし、よくなついたもんだね」

と頻りと感心された。

公園で猫と座っていると、こんな風によく話しかけられる。お母さんに連れられた子供から、

「それ、どうやってやるん。俺がやるとすぐ逃げよるねん」

と質問されたこともあるし、豹柄のタイツをはいたいかにもな大阪のおばはんから、

「あんた~最近、顔も見せんと、こんな若い子と乳繰りおうてたんか」

と言われたこともある。一応言っておくと、言われたのはピーの方。どうやら餌をあげてくれている人だったようだ。猫はいつだって手広く事業を展開する。

猫となかよくなるにはコツがある。

まず近づくときに、おおまたで歩み寄ってはいけない。特に靴の裏を見せるのは厳禁だ。たいがいの野良猫は、一度か、二度、人間に蹴っ飛ばされた経験を持っている。靴裏を見せるのは、そのトラウマを刺激することになる。いなかっぺ大将のような歩き方は絶対駄目ということだ。

なるべく猫の視線と同じ高さになるように、背をかがめ、足を小さく刻んで近づく。これが鉄則。

運がよければ、この時点で、猫の方からすり寄ってくる。そうでなければ、猫の肩の辺りを見よう、リラックスしているようだったら、大丈夫。だが、盛り上がっているようなら、少し工夫がいる。猫の緊張を解かなくてはいけない。

そのためには、一旦近づくのをやめ、その場で一、二度欠伸しよう。猫の目を見つめ、ゆっくり瞬きしたり、目線を反らせたりするのもよい。もし猫がそれにあわせ、自分の向いた方を見たり、瞬きしたりするようなら脈がある。あとは、ゆっくり近づく、向こうが緊張しはじめたら、立ち止まって先の戦法をやるのの繰り返しだ。

決して焦ってはいけない。じっくり時間をかけて、自分がどんなに君のことを素敵で、美しく、怒らせたら手強い存在と思っているか、リスペクトしているか、仲良くなりたいと思っているか、全身全霊で伝えなくてはいけない。途中で逃げ出した場合は、素直にあきらめよう。追いかけるのは最悪の選択だ。また間をおいてから、再チャレンジすればよい。

さて、幸運にも貴方は猫に手を届く場所までついた。ここですぐその毛並みを撫でてやりたくなる気持ちは分かるが、ぐっとこらえよう。間合いに入ってもなお猫が警戒を解いてない可能性があるのだ。なので、猫と同じ方向を向いてぺたりと地べたに座ることをおすすめする。猫が複数匹一緒にいるときは、横腹をくっつけあった座り方をよくしているでしょう。そのやり方を真似るわけだ。

ここまで来ても、猫が座ったままなら、もう大丈夫。手を出して撫でてやろう。尻尾の付け根あたりを、ぽんぽんと優しく叩いてやるのもよい。でも、抱き上げるのはやめておこう。猫は徹頭徹尾自由な生き物なので、手込めにされることは徹底的に嫌う。もし向こうが貴方のことを気に入ったら、勝手に、玉座に座る王者のような優雅さで膝に乗ってきてくれる。それまでは、バチカンのスイス人の傭兵のようにじっと我慢だ。

アドバイス通りやっても、全然猫がなついてくれないという人もいるかもしれない。だが心配無用だ。

今、猫があの大きさなのは、人間の赤ん坊の大きさと同じになるように進化したかららしい。また、猫の泣き声「ニャー」も、赤ん坊の泣き声と同じ音の高さだ。

一方、人間の成人の手の大きさも、赤ん坊の時の猫を舐める母猫の舌と、比率的に同じ大きさになるようになっている。

つまり人と猫、この二つの種族は、愛し愛される、庇護し庇護される関係を築くために、お互いちょうどいいサイズになるよう進化しあった仲間なのだ。

「自分の手の大きさは母猫の舌と同じ大きさ」

そう念じて、何度でもアタックを繰り返してもらいたい。そうすれば、きっと猫は貴方に心を開く。そして、貴方を椅子にしてくれるだろう。

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

三国志連載小説
花武担 花武担
プロフィール

黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ご意見、ご感想はこちら。必ず返信します

名前:
メール:
件名:
本文:

works
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR