ネット小説時代の思い出

先日、バーで飲んでたら、隣り合わせた人と、ネット小説の話題で盛り上がった。その方は、作家志望者で、結構有力な賞の三次選考とかにも残っているらしかった。最近はさらに腕をみがくために、ネット小説に投稿しようかと考えているそうだ。

普通に暮らしているとなかなか創作の話を直で語り合えることはないのでこういう出会いはとてもうれしい。

しかし、ネット小説で創作にいそしんでいる人は結構多いものだ。ネット小説上で出会った親友達の結婚式のスピーチをしたこともあるし、こないだの小川洋子さんの朗読会では、別個にはゆまの知り合いだった二人が初めて出会って挨拶したら、実はネット小説上での付き合いがあり、お互いに会いたいなぁ~と思っていた同士だったりした。

かくいう、はゆまもFC2小説というネット小説サイトで書いていたことがある。

自分で書いたものが人目にさらされ、感想も返ってくるという経験をはじめてしたのが、その場所だった。原稿用紙10枚ほどの短編に、初めて感想が来たときの喜びはいまだに忘れない。部屋のなかで、三十分ほど小躍りしていたように思う。

FC2小説にいたのは二年ほどだったが、ネット上とはいえ、お互いに感想を言い合ったり、励ましあったり、時には辛らつな批評で活を入れられたりと本当に楽しかった。その時に書いていた、三国志の長編は、勝手に中国の、日本語学習者のポータルサイトに掲示され、完璧に著作権違反のナルト第一話丸まるコピーのページの隣になっていたりもした。

ただ、やっぱりいわゆる荒らしといわれる人もいた。はゆまも、しつこく絡まれたが、それはもう大変だった。

はじめははゆまの書いた掌編に高評価をつけてくれ、その感想の文も達意なものだったので、なかなかすごい人だな、この人の小説も読みたいものだと思っていたのが、たった一日で一変。

急に自分のエッセイや、他の人の作品の感想にまで、はゆまの悪口を書き出し、自分のブログに誘導しようとしだした。何でも、はゆまが、自分のブログのネタを盗作したというのだ。

1)はゆまの掌編に焼酎の黒霧島が出てくるが、それは自分のブログにものっている。2)生レバーをごま油と塩で食べる描写があるが、それは自分のブログにものっている。3)梶井基次郎のレモンの引用があるが、それは自分のブログでもやっている、とのことだった。

最後に、数年前の自分のネカマ時代のブログ記事までわざわざ掘り起こして小説のネタにするはゆまとやらは、卑怯なやつだという罵倒まで、はゆまは浴びたのだった。

一言で言えば、サイコ君である。

大体、そのブログとやらをはゆまは見たことがなかったし、1)については黒霧島は宮崎の県民酒、2)は大阪の焼肉屋では当たり前、3)は梶井基次郎の檸檬を引用して怒っていいのは梶井基次郎だけだろう。

また、何故か人を攻撃する際に、自分の履歴や性癖を披露する癖のある人のようで、何でも、当時25歳で、無職で、童貞ということだった。おまけに、先に書いたもとネカマという特性まで加わる。

どれ一つとっても、放置していたら、死に至る病である。合コンに行って素敵な異性を見つけたり、リクナビエージェントに登録して自分の才能を試せる職場を探したりした方が、何ぼか有意義だと思うのだが、それよりも彼にとってははゆまを攻撃することのほうが大事なようだった。

その後、当然のように、彼は誰からも相手にされなくなり、もうはゆまだけでなく、世界中を呪詛しつつ、FC2小説から消えていったのだが、どうもこういった手合いは、ネット小説界のどこにでもいるらしい。

何人かのネットでの創作を経由してデビューした方の話を聞くと、そのほとんど全員が、はゆまと似たような経験をしていた。その意味では、こういった人に出くわすのは、それだけ作品が注目されたということだから、喜ぶべきことなのかもしれない。

それに彼らにだって同情すべき点がないわけではない。もし彼らに週末の晩にベッドの上で思い切りふざけ合える恋人がいれば、自分のまだ一度も発揮したことのない知恵と才覚を奮える職があれば、そして、そうした鬱屈をバネに小説や漫画を書くだけの才気と勇気があれば、彼らだってこんなことはしないだろう。ネットの世界では、性を偽らなくてはならないほど、彼らは傷ついて、追い詰められているのである。

だから、もしこれからネット小説で作品を書き始めたり、あるいはもう書いている人がいて、こういった手合いに出会ったら、憐憫の笑いをかけてやったあと、そっと削除ボタンを押してあげますよう。才気と勇気にあふれた貴方に、こんな人たちをかまってやる時間はないはずなのだ。

皆様、ご健筆を。

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三国志連載小説
花武担 花武担
プロフィール

黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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