雁のリーダー

雁についてのドキュメントを見ていたら面白いことを知った。

雁といえば雁行形という言葉の元にもなった独特の群れの形で知られる。両辺を持つか、片辺だけかの二通りあるが、斜めに少しずつずれながら飛んでいく形状である。群れのリーダーは当然、先頭を行く鳥で、彼が集団の行き先を決める。

この独特の群れの形には、実は科学的な理由があって、雁が羽ばたくとき、左右斜め後方に空気の渦が出来る。この渦が上方気流を作るため、雁は飛びやすいよう、仲間の斜め後ろ、斜め後ろに行こうとして、自然にああいった群れの形になるのである。

上方気流は、群れの後ろに行けば行くほど、渦の効果が重なり強くなる。そのため、群れの最後尾には、まだ若くて未熟だったり、年老いた鳥が配置される。彼らは自分の力よりは、仲間の羽ばたきに拠って、体を浮き上がらせることが出来る。

一方、ドキュメントでは、そこまで言及していなかったが、この理屈を延長していくと、最もつらいのは、先頭を行く雁ということになる。誰の渦に頼ることも出来ないうえに、彼の作る渦だけが、群れのすべての鳥が乗ることになるために、誰よりも強く羽ばたかなくてはならない。つまり、彼は自分ひとりのためだけでなく、群れすべてのために羽ばたくのである。

ドキュメントを見終わったとき、不思議な感動が身を包んでいた。秋にやって来る群れ、春に去って行く群れ、いずれを見るにせよ、これからは決して漫然と見ることはなく、必ずその先頭を駆る鳥に目が行くだろう。彼こそが、種を越えて、共通するリーダーの役割を、わき目もふらず果たしているものなのである。集団の方向を指し示すことと、集団の勇気を掻き立てること。その両方を。

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黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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