「G戦場ヘヴンズドア」日本橋ヨヲコ

はゆまは今3LDKのアパートに住んでいて、書き物をするときは、そのなかで一番玄関近くの六畳ほどの部屋を使っている。

天井まで届く本棚と机が一体になったやつにPCを置いてカチャカチャやるのだが、ブーチンはお気に入りの電気座布団の上。冬の間に自分の匂いがしみついたらしく、スイッチを入れない季節になっても、これじゃないと納得しない。いつも香箱すわりで働きぶりを監視している。

いわば書斎のその部屋に置く本は決まっていて、執筆に必要な資料集とかのみだ。小説や漫画、雑誌などの気が散るものは一切置かない。

だがただひとつ例外があって、それが「G戦場ヘヴンズドア」

漫画家を目指す二人の少年の成長を描いた漫画だが、とにかく面白い。三巻という分量もいいし、ストーリーの密度と展開はほぼ完璧。そして、創作を志すものにとっては箴言のごとき名言の数々。

「読者はあんたのファンじゃないのよ。がんばって読んでくれるなんて思わないことね」

「本物との差を決定的に分ける一線て、いったい何なんですか!?」
「人格だよ」

「この世界は読者が花(主役)。オレらはそれを引き立てる草だ(ワキ役)だ」

すばらしいよね。

作者のあとがきもとても素敵で、

「じゃあ、どんなもので漫画を作っているかというと、たまに、本当にたまになのですが、一瞬だけ、この世の本の一部の実存と構造が分かる瞬間があって、それを切り落として描かずにはいられなくなるのです。

その時のわたしは、信じてもらないかもしれませんが、熱さとは真逆の、無に近い状態でいるのです」

尊いなぁと思う。こういう感じは(おこがましいけど)とてもよく分かるのだ。はゆまも結局のところ、歴史の人物や事件の、ほんの一部の実存や構造が恩寵のようにはっと分かる瞬間があって、それをどうしても表現したくて、机にかじりついているのだと思う。

この漫画と出会ったのは、ちょうどはゆまが小説本気でやるかどうかの門口に立っていたとき。だから、最初は斜に構えていた町蔵が、段々一番やりたかったこと、漫画に向かっていくさまには、痛切な共感を覚えた。大袈裟でなく、どんと創作の道に向かって、背を押してくれた作品と言っていいのかもしれない。

そして、今でも、執筆に疲れたり、怠け癖が出そうなときは、この漫画を開いて、青臭い台詞を吐きながら、ペン一筋に漫画の道へとひた走る、町蔵と鉄男の姿に闘志と勇気をもらっている。

もし、まだ読んでない人がいれば、是非読んで欲しい。人生を変えてしまうかもしれない。それだけの力のある漫画です。

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三国志連載小説
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プロフィール

黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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