中国民話集

飯倉照平氏編訳の「中国民話集」読了。

面白かった。やっぱり民話はどの国のものでも好きだな。この本にも書いてあったけど、物語を聞くのは、人類の食欲・睡眠欲・性欲と並んで、原初的な欲求なんだと思う。部族の老若男女が、焚き火のまわりに集まって、その温もりに顔をこがしながら、話(嘘)の得意なものが、語るオハナシに耳を傾ける。

「善いことをするとどうなるの?」「悪いことをするとどうなるの?」「海はどうして青いの?」「空はどうして青いの?」「世界のうんと遠くに行くとどうなるの?」「世界はどうはじまったの?」「世界はどう終わるの?」「僕達どうしてここにいるの?」

様々な?に語り手は答える。想像力一つを武器にして。そして、この混乱して破綻に満ちた世界に、筋道だった秩序と理由、何より彩りを与える。はゆまの夜の職業の始原だ。

本著のなかの「海の水が塩からいわけ」なんかは、今の科学的知見からは、まさに荒唐無稽な話だろう。その蒙昧さを笑うのはたやすい。だが、そういった人も結局、いわばネットからのコピペ的な知識を持っているだけなのだ。今の大人は(ひょっとしたら子供も)本やネットの文章で単に読んだことと、本当の意味で知っていることの区別がついていない。はゆまは、岩に含まれる塩化ナトリウムが溶け出して云々の説明よりは、海の底で塩を吹き出す臼が回り続けているという話の方が好きだ。人間の心の奥底に届くのは、常にこういった話なのだと思う。

この本のなかで、一番気に入ったのは、「蛙の息子」ジブリ的リアリズムといえばいいのか、とにかくおじいさんとおばあさんの息子になった蛙の描写が変に生々しくて、おかしい。住処の水桶の板を赤や緑の綺麗な紙の端切れで飾ったり、草花をふちに差したり、そしてそれを褒められると、水の底にはにかんで潜ったりと、その仕草に萌えてしまった。そうなんだよなぁ、物語に生き生きとした臨場感を与え、読者を引き込まずにはいられない力の源になるのは、こういう細部なんだよね。見習わないと。

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黒澤はゆま

Author:黒澤はゆま
歴史小説家。はゆまは古語で「早馬」「報せ」の意味。小説のことや歴史のこと、また日々の徒然のことを、「報せ」ていこうと思います。三国志を舞台にした小説「花武担」連載中。

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